その由来について[函館教会週報付録⑧より]
10月27日の宗教改革主日に聖別式を行い、正式に函館教会の聖具となった新しい洗礼盤。池田教会からの譲渡の経緯については、週報付録③10/27号でお伝えしたとおりです。 そして、その由来について、まだ判明していないことをお断りしながら、増田正子さんより伝えられた、新会堂建設後の設置ではないか、という推察を紹介した次第でした。池田教会は、1968年に道路拡幅のための補償金を得て新会堂の建設を行ったので、当時購入したステンドグラスと共に洗礼盤も購入した可能性がある、とのお話しでした。
ところがこの度、調査を依頼していた浦幌博物館の学芸員である持田誠氏から新情報が届きました。結論から言いますと、この洗礼盤は、1957年の池田伝道所最初のクリスマス礼拝で初めて用いられたものと、ほぼ断定出来る、というのです。ご案内しましたように、現在浦幌町立博物館では「信仰の灯は永遠に 福音ルーテル池田教会と吉田康登牧師の足跡」という企画展が開催されています。この企画展のために持田氏は池田教会に関係する資料を整理して下さることになっていましたので、もし可能ならば、ということで洗礼盤の由来について調査をお願いしてみたのです。すると、以下のような調査によってほぼ結論を得ることが出来た、ということでした。
①池田教会と横山佳代子氏所蔵のアルバムの写真のうち、洗礼盤が写り込んでいるものではっきり年代が記載されているものは1960年の写真である。 ②洗礼盤が写った年月日不詳の写真の中で、これよりも古いと思われる写真が2葉あり、いずれもクリスマスの写真と推察される。 ③上記2用の写真は、アルバムに貼られた位置から1957~1960年の撮影と推察される。 ④池田教会の教会日誌や会計記録にあたったところ、残されていた会計記録は1958年以降のものであって、かなり細かい物品の購入記録まで計上されているが、洗礼盤についての記述はないため、それ以前の導入であると推察される。 ⑤2葉のうち一枚は、明らかに洗礼盤そのものを撮影したものであり、洗礼盤導入時の記念写真ではないかと想像される。 ⑥上記写真は、アルバム内での位置などから、1957年の池田伝道所最初のクリスマス礼拝の記念写真と同時期のものと考えられる。
というわけで、この洗礼盤は、1957年に池田教会の前身である池田伝道所の最初のクリスマス礼拝において導入されたものであるとほぼ断定出来る、とのことでした。 持田氏の丁寧な調査により、この洗礼盤の由来が明らかにされたことを心から嬉しく思います。また持田氏は、1982年の山之内牧師による洗礼式の場面で、この洗礼盤が用いられている写真も同封して下さいました。池田教会と函館教会のつながりを一枚の写真が改めて教えてくれているようで、この写真の存在も嬉しく感じられたことでした。
洗礼盤は、それ自体が見える場所に存在していることによって、礼拝の度ごとに、キリスト者に自分自身の洗礼を思い起こさせる作用があります。これまで、池田教会にあって62年間にわたり、多くのキリスト者を生み出す聖具として用いられてきた洗礼盤が、池田教会の会堂の閉鎖と共に、その役割を終えてしまうのではなく、増田ご夫妻や山之内先生を通して、池田教会とも関係の深い函館教会で、新たな役割を与えられたことに、神さまの計画を思わされます。 クリスマスに予定されている洗礼式によって、この洗礼盤の函館教会での新たな役割がスタートします。この洗礼盤を通して、さらに豊かな受洗者が与えられていくように祈り求めてまいりたいと思います。洗礼盤をお送り下さった池田教会のみなさんと、調査にあたって下さった持田誠氏、そして神さまの不思議なお取りはからいに、改めて感謝する次第です。